結論:金利が低いほど、急がないほうがよくなる
住宅ローン控除は、年末時点のローン残高に応じて税金が戻ってくる仕組みです。 繰上げ返済をすると残高が減るため、戻ってくる税金も減ります。
つまり控除を受けている期間の繰上げ返済は、 「減らせる利息」と「減ってしまう控除」の差し引きで考える必要があります。 ローンの金利が低いほど利息の削減が小さくなるので、この差は縮まります。
仕組みをもう少し詳しく
住宅ローン控除は、年末のローン残高に一定の率を掛けた額を、 所得税(引ききれない分は住民税の一部)から差し引く制度です。 残高が多いほど控除も多くなります。
ここで大事なのは、これは「戻ってくるお金」であって、ローンの利息とは別勘定 だということです。繰上げ返済は利息を減らしますが、同時に控除も減らします。 両方を足し引きしないと、得か損かは分かりません。
控除率・控除期間・借入限度額は、住宅の種類や入居した年によって異なり、 制度改正もあります。ご自身に適用される条件は、必ず国税庁の資料や税務署で確認してください。 以下の計算は控除率0.7%・控除期間13年と仮定した一例です。
実際に計算してみる
次の条件で、繰上げ返済をした場合としない場合を比べます。
- ローン残高 2,500万円/残り25年/元利均等返済
- 12回目の返済のあとに 100万円 を繰上げ返済(期間短縮型)
- 控除率0.7%・控除期間13年と仮定
| ローンの金利 | 減らせる利息 | 減ってしまう控除 | 差し引き |
|---|---|---|---|
| 年1.0% | 264,547円 | 89,692円 | +174,855円 |
| 年0.4% | 98,622円 | 86,220円 | +12,401円 |
金利1.0%なら、繰上げ返済したほうが約17万円おトクです。 控除が減ることを考えても、利息の削減がそれを大きく上回ります。
ところが金利0.4%では、差し引きで1万円ほどしか残りません。 100万円を13年近く動かせなくすることの対価としては、ほとんど見合わない水準です。 この場合は控除期間が終わるまで待ち、その間は手元に置いておくほうが合理的です。
「控除中は絶対に繰上げ返済するな」ではない
「住宅ローン控除の期間中は繰上げ返済しないほうがよい」とよく言われますが、 上の計算のとおり金利によって答えは変わります。 金利1%前後のローンなら、控除期間中でも繰上げ返済したほうが得になります。
目安としては、ローンの金利が控除率を大きく上回っていれば繰上げ返済が有利、 控除率に近ければ待ったほうがよいと考えてください。
控除を満額受けられていない場合
見落とされがちな点があります。住宅ローン控除は、実際に納めた所得税・住民税の範囲内でしか戻りません。
残高に対する控除額が、その年に納めた税額を上回っている場合、 上回った分はもともと戻ってきていません。 この状態なら、繰上げ返済で残高が減っても戻る税金は変わらないため、 上の表よりもずっと繰上げ返済が有利になります。
源泉徴収票や確定申告の控えで、控除しきれていないかを確認してください。 共働きで住宅ローンをペアで組んでいる場合も、それぞれの納税額で判断が変わります。
自分の条件で計算する
減らせる利息のほうは、このサイトの繰上げ返済シミュレーターで正確に出せます。 出てきた「減らせる利息」と、ご自身の控除額の減少見込みを比べてください。
控除額の減少は、おおまかには「繰上げ返済した額 × 控除率 × 残りの控除年数」 で見当がつきます。上の例なら 100万円 × 0.7% × 12年 = 8.4万円で、 実際の計算結果(89,692円)に近い値になります。
判断の順番
- 手元に残すべきお金を先に確保する。生活費の半年分、使う予定が決まっているお金は動かさない
- 控除を満額受けられているかを確認する。受けきれていないなら、繰上げ返済の不利は小さい
- 減らせる利息を計算する。シミュレーターで実際の数字を出す
- 減る控除額と比べる。差し引きで明確にプラスなら実行、ほぼ互角なら控除期間の終了を待つ
まとめ
- 繰上げ返済は利息を減らすが、同時に住宅ローン控除も減らす
- 金利1.0%なら差し引き約17万円のプラス、0.4%ならほぼ互角
- 「控除中は繰上げ返済するな」は金利しだいで当てはまらない
- 控除を満額受けられていないなら、繰上げ返済はもっと有利になる
- 制度の条件は改正される。自分の適用条件は国税庁か税務署で確認する