結論:見るべきは「諸費用を何年で取り戻せるか」
借り換えの損得は、毎月いくら減るかではなく、 借り換えにかかった費用を、その差額で何年かけて取り戻せるかで決まります。 この「取り戻せる時点」を損益分岐点と呼びます。
損益分岐点が残りの返済期間より手前にあれば、その借り換えは得になります。 逆に、あと5年で返し終わるローンで損益分岐点が7年後なら、借り換えると損をします。
金利差だけで比べると、必ず「得」に見える
借り換えには数十万円単位の費用がかかります。ところが金利を下げれば毎月の返済額は 必ず下がるので、費用を計算に入れなければ、どんな借り換えでも得に見えてしまいます。
「金利が0.7%下がって月8,000円安くなる」という説明は正しくても、 それだけでは判断材料になりません。費用が70万円かかるなら、 8,000円の節約で70万円を埋めるのに何年かかるかを見なければ意味がないからです。
借り換えにかかる費用
おおよそ次のものがかかります。金額は金融機関や借入額によって大きく変わります。
| 費用 | 目安 |
|---|---|
| 事務手数料 | 定額(3〜5万円程度)または借入額の2.2%前後 |
| 保証料 | 0円の場合もあれば、数十万円かかる場合も |
| 抵当権の設定・抹消(登録免許税+司法書士報酬) | 10〜20万円程度 |
| 印紙税 | 2万円程度 |
| いま借りている銀行への全額繰上返済手数料 | 0〜数万円 |
借入額2,000〜3,000万円で、合計50〜80万円ほどになることが多いです。 事務手数料が「借入額の2.2%」の銀行だと、2,500万円なら手数料だけで55万円になります。 金利の低さだけで銀行を選ぶと、費用で逆転することがあります。
実際に計算してみる
次の条件で計算します。
- 残債 2,500万円/残り25年
- いまの金利 年1.5% → 借り換え後 年0.8%
- 借り換え費用 70万円
| いまのまま | 借り換え後 | |
|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 99,984円 | 91,972円 |
| 総返済額 | 29,995,224円 | 27,591,583円 |
| 借り換え費用 | — | 700,000円 |
| 費用を含めた総額 | 29,995,224円 | 28,291,583円 |
毎月の差は8,012円、最終的な差は約170万円です。 そして損益分岐点は88回目(7年4ヶ月後)。 残りが25年あるので、この条件なら借り換えたほうが得だと判断できます。
一方、もし残りの返済期間が7年しかなければ、損益分岐点に届く前に 完済してしまうため、同じ条件でも借り換えは損になります。 残り期間が短いほど、借り換えは不利になります。
よく言われる目安と、その限界
「残債1,000万円以上・残り期間10年以上・金利差0.3%以上なら検討の価値あり」 という目安がよく紹介されます。大きく外してはいませんが、これはあくまで 費用を一般的な水準と仮定したときの話です。
手数料が借入額の2.2%かかる銀行と、定額5万円の銀行では、必要な金利差が変わります。 目安で当たりをつけたら、実際の費用を入れて計算するのが確実です。
自分の条件で計算する
このサイトのシミュレーターで、いまのローンと借り換え後を並べて比較できます。
- 「借り換えの試算をする」にチェックを入れ、いま返済中のローン(残債・残り年数・現在の金利)を入力します。諸費用は0のままにします
- 「+ 複製」で2つ目を作り、借り換え後の金利と借り換え費用を入力します
- 「選んだパターンを比べる →」を押すと、損益分岐点が表示されます
計算に出てこない注意点
数字の上で得だとしても、次の点は別に確認が必要です。
- 審査があります。借り換えは新規の借入と同じ審査を受けます。収入や健康状態、 物件の担保評価によっては借り換えられないことがあります
- 団体信用生命保険の内容が変わります。いまのローンに付いている保障 (がん保障など)が、新しいローンでは付かない、あるいは金利が上乗せになることがあります
- 返済期間を延ばすと、毎月の負担は減っても総額は増えます。 借り換えを機に期間を延ばす場合は、総返済額で比べてください
- 変動金利に借り換える場合、将来の上昇は計算に含まれていません。 シミュレーターの「金利の変更」で、上がった場合も試しておくと安心です
まとめ
- 判断基準は金利差ではなく、費用を取り戻せる時点(損益分岐点)
- 損益分岐点が残りの返済期間より手前なら得になる
- 費用は50〜80万円かかることが多く、銀行によって大きく違う
- 目安で当たりをつけ、実際の数字で計算して確かめる